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ハラスメント相談がないことに安心していませんか?

ハラスメント相談がないことに安心していませんか?

国の調査から見える「相談を諦める職場」の問題

企業のハラスメント対策というと、「相談窓口を設置する」「社内規程を整備する」「研修を実施する」といった取り組みが中心になりがちです。
もちろん、こうした仕組みを整えることは重要ですが、しかし、本当に確認すべきなのは、

「制度があるか」ではなく、「問題が起きたときに、その制度が機能する職場になっているか」

だと思っています。
厚生労働省と人事院の調査を見ると、その課題が見えてきます。

パワハラ経験者は約5人に1人

厚生労働省が全国の労働者8,000人を対象に実施した「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間にハラスメントを受けた経験について、

パワーハラスメント 19.3%
顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント) 10.8%
セクシュアルハラスメント 6.3%

という結果が出ています。

前回の令和2年度調査と比較すると、いずれも割合は低下している一方で、パワハラは依然として約5人に1人、カスハラも約10人に1人が経験している計算です。

そして注目したいのは、「ハラスメントが起きたかどうか」だけではありません。

起きた後に、従業員が声を上げられるのか。

ここに大きな課題があります。

ハラスメントを受けても、約3人に2人が相談していない

人事院が一般職の国家公務員を対象に実施した「各府省におけるハラスメント相談に関する職員アンケート」では、ハラスメントを受けたと感じた職員のうち、

相談した 35.8%
相談していない 64.2%

という結果でした。
つまり、ハラスメントを受けたと感じても、約3人に2人は誰にも相談していません。

さらに興味深いのが、「誰に相談したのか」です。
相談した人の相談先は、

上司 68.4%
同僚 44.4%
公務内の相談窓口 16.8%

でした。
正式な相談窓口よりも、身近な上司や同僚に相談している人の方が圧倒的に多いのです。

企業でも「相談窓口を設置したから大丈夫」とは言い切れません。
重要なのは、

「何かあったら、ここに相談しても大丈夫」

と従業員が思えるかどうかです。

「相談されない=問題がない」ではない

ここで企業が気をつけなくてはならないのが、

「相談件数が少ない会社=ハラスメントが少ない会社」とは限らない

ということです。

相談窓口を設置していても、

「相談したら大ごとになりそう」
「自分にも原因があると言われるのではないか」
「今後、働きづらくなるのではないか」
「どうせ相談しても何も変わらない」

と思われていれば、問題は表面化しません。
つまり企業にとって怖いのは、相談件数そのものよりも、

「問題が起きているのに、会社には上がってこない状態」

ほど恐ろしいことはありません。

厚生労働省の調査でも、パワハラを経験した人の勤務先には、「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」「失敗への許容度が低い」「人手が常に不足している」などの特徴がみられており、ハラスメント対策は、禁止事項を伝えるだけでは十分ではありません。

必要なのは「窓口の設置」から「相談できる組織」への転換

ハラスメント防止というと、どうしても「何をしてはいけないか」に目が向きますが、問題が起きたときに早期に把握するためには、

「何かあったとき、声を上げられる組織になっているか」

という視点がとても必要です。

そのためには、相談窓口の周知だけでなく、相談したことで不利益を受けないことを伝えること、管理職が最初の相談相手になったときの対応を学ぶこと、相談を受けた後の初動を組織として決めておくこと、そして相談者に「相談しても無駄」と思わせない対応を積み重ねることが重要です。

特に、人事院の調査で最も多い相談先が「上司」だったことは見逃せません。

ハラスメント相談の入口は、人事部や相談窓口だけではないのです。

日常的に部下と接している管理職が、違和感や小さなSOSを受け止められるかどうか。ここも、企業のハラスメント対策を左右する重要なポイントです。

ハラスメント対策の成果を「相談件数ゼロ」で判断しない

相談がゼロだから安心。
苦情が来ていないから問題はない。

そう判断する前に、一度考えてみる必要があります。

本当に問題がないのか。
それとも、「言っても仕方がない」と誰も声を上げなくなっているのか。

制度を整えることは、ハラスメント対策のゴールではありません。

制度を知っている。
相談できる。
相談したら組織が動いてくれる。

そこまで従業員が実感できて、初めて制度が「機能している」といえるのではないでしょうか。

ハラスメント対策では、「相談窓口があります」から、「安心して相談できる組織です」へ。

これから企業に求められるのは、制度の有無だけではなく、その制度を機能させる職場づくりです。

【参考資料】
厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」
人事院「各府省におけるハラスメント相談に関する職員アンケート調査結果」

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