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勤務時間外の連絡はどこまで許される?――裁判例から考える「つながらない権利」と管理職の役割

勤務時間外の連絡はどこまで許される?――裁判例から考える「つながらない権利」と管理職の役割

「つながらない権利」と言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。

スマートフォンやチャットツールの普及により、勤務時間外でも簡単に業務連絡ができるようになりました。
上司にとっては、必要な情報をすぐに確認できる便利な環境です。一方、部下にとっては、退勤後も仕事から離れにくくなる場合があります。

こうした問題に関連して注目されているのが「つながらない権利」という考え方です。

今回は、2020年の裁判例をもとに、勤務時間外の業務連絡と管理職のマネジメントについて考えます。

裁判例:帰宅後、夜遅くまで繰り返された業務連絡

東京地方裁判所・2020年6月10日判決

生命保険会社A社では、育成部長のBさんが、部下のCさんに対し、帰宅後も繰り返し電話などで活動報告を求めていました。

Cさんは育児のため、午後4時までの短時間勤務を認められていました。しかし、帰宅後の午後7時や8時過ぎ、遅いときには午後11時頃にも、Bさんから業務報告を求める連絡が頻繁にありました。

A社は、Bさんの行為をパワーハラスメントに当たるとして、戒告処分を行いました。

これに対しBさんは、自身も上司から繰り返し報告や業績向上を求められ、追い詰められた状況で指示に従っていたなどと主張し、処分の有効性を争いました。

裁判所は、連絡の態様や頻度が業務上の適正な範囲を超えており、職務上の優位性を背景としたパワーハラスメントに該当すると判断しました。そして、会社による戒告処分を有効と認めました。

「つながらない権利」とは

「つながらない権利」とは、勤務時間外や休日に、仕事上のメールや電話などから離れることに関する考え方です。

日本でも、勤務時間外の業務連絡のあり方について議論が進められています。

ただし、今回の判決は「つながらない権利」という独立した権利を認めたものではありません。
また、勤務時間外の連絡がすべてパワハラになると判断したものでもありません。

この裁判例では、短時間勤務を利用していた部下に対し、帰宅後の夜遅い時間に頻繁に業務報告を求めたという具体的な事情が重視されています。

ここからは、裁判例を踏まえた人材育成・マネジメントの観点から考えます。

「つながらない権利」を守るために、組織が考えたいこと

① 勤務時間外の連絡を「当たり前」にしない

勤務時間外でも連絡が取れる環境は便利ですが、それが常態化すると、従業員は退勤後も仕事を意識し続けることになります。特に、上司からの連絡は、部下にとって「すぐに対応しなければならない」と感じやすい心理を忘れてはなりません。

管理職自身が、勤務時間外の連絡の必要性を見極めるとともに、組織としても、時間外の対応を当然としない職場風土をつくることが重要です。

② 管理職自身が「つながり続ける働き方」になっていないか

今回の裁判では、上司であるBさん自身も、さらに上位の管理職から頻繁に報告を求められていたと主張しています。
この主張が裁判所に認められたという意味ではありませんが、組織づくりの観点では見過ごせない論点です。

上司が常に対応を求められる環境では、その負担が部下への要求に影響する可能性もあります。
管理職個人の行動だけでなく、管理職に求めている業務量や対応のあり方にも目を向ける必要があります。

③ 「つながらない時間」を組織として尊重する

勤務時間外の連絡を控えるかどうかが、上司個人の判断だけに委ねられていると、部署によって対応が異なることがあります。

通常の業務連絡は勤務時間内を基本とすること、緊急時の対応が必要な職場では担当者や対応体制を明確にすることなど、組織としての方針を共有することが大切です。

「連絡できること」と「連絡してよいこと」は同じではありません。

従業員が安心して仕事から離れられる時間を確保することも、持続可能な組織運営の一つです。

④ 上司自身の報告負担にも目を向ける

今回の裁判では、部下に頻繁な報告を求めていたBさん自身も、上司から繰り返し報告を求められていたと主張しています。

上位者への報告項目や頻度が過剰になっていないか、必要な情報を適切に共有できる体制になっているか。

部下への連絡方法だけでなく、組織全体の報告のあり方を見直すことも大切です。

まとめ:必要な情報共有と、仕事から離れる時間の両立

勤務時間外の連絡を減らすことは、単に連絡を控えるという問題ではありません。
必要な報告をいつ、どのような方法で行うかを整理し、緊急時には適切に対応できるようにすることが求められます。

管理職に必要なのは、常に部下とつながっていることではなく、必要な情報を把握し、適切に判断できることです。

業務上の必要性と、働く人が仕事から離れる時間。その両方を大切にするマネジメントが求められています。


参考資料・出典

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