東京都の「カスタマーハラスメントに関する実態調査」では、カスハラ防止対策に「取り組んでいる」と回答した企業は38.5%でした。
カスハラという言葉を知っている従業員は88.4%。
認知は約9割まで進んでいる一方、実際に対策を行っている企業は4割弱という状況です。
対策企業は何をしているのか
すでにカスハラ防止対策に取り組んでいる企業では、次のような施策が行われています。
- 相談窓口の整備 65.7%
- 実態把握のための調査 52.9%
- 被害従業員のケア 50.9%
相談できる場所をつくるだけでなく、実際に何が起きているのかを把握し、被害を受けた従業員をケアするところまで含めた対策が進められていますが、相談窓口があるのに、相談しづらい社員が意外と多いことは先日お伝えしました。
では、なぜ対策が進まないのでしょうか。
なぜ対策が進まないのか
一方、対策に取り組んでいない企業にその理由を聞いたところ、最も多かったのが、
「正当なクレームとの判断の難しさ」29.6%
でした。
次いで、
「ノウハウ不足」23.8%
「発生状況の把握が困難」16.7%
となっています。
ここに、カスハラ対策の難しさがあるなと私は思います。
すべてのクレームがカスハラというわけではありません。
商品やサービスに問題があれば、顧客が改善や説明を求めることは当然あります。
一方で、要求そのものには理由があったとしても、暴言や威圧、長時間の拘束、同じ要求の執拗な繰り返しなど、要求の「伝え方・行い方」が社会通念上許容される範囲を超えるケースもあります。
その線引きはなかなか難しいですよね。
そのため現場では、
「これは正当なクレームなのか」
「どこからカスハラとして対応すべきなのか」
「いつ上司に報告・相談すべきなのか」
という判断に迷いが生じることも多いと思います。
企業に求められているのは「現場が判断できる仕組み」
カスハラ対策では、相談窓口を設置するだけでは十分とはいえず、重要なのは、実際に顧客対応をする従業員が、一人で抱え込まず、一定の基準に沿って判断し、組織として対応できる仕組みをつくることです。
たとえば、次の3つは企業が検討したいポイントです。
① 基本方針を明確にする
従業員の安全と尊厳を守り、社会通念上不相当な要求や言動には組織として対応することを明文化し、社内外に示します。
② 記録とエスカレーションのルールを決める
電話・メールでの被害が多いという今回の調査結果も踏まえ、対応記録を残す方法や、どの段階で上司・責任者へ引き継ぐのかを決めておくことが重要です。
必要に応じて、複数人での対応や録音等の活用についても、自社の業務や法令等を踏まえてルールを整備します。
③ クレームとカスハラの「判断基準」を共有する
「要求内容に妥当性があるか」だけではなく、要求の手段・態様が社会通念上相当な範囲かという視点も必要です。
普段から具体的なケースを使いながら、
「このケースはどう判断するか」
「担当者はどこまで対応するか」
「どのタイミングで上司へ引き継ぐか」
を管理職と従業員で共有しておくことで、現場での迷いを減らすことができます。
「知識」から「判断できる」カスハラ対策へ
行政に求める支援として、企業から最も多く挙げられたのは「条例や法改正に関する情報発信」39.6%でした。
制度やルールが変化する中で、企業側にも正しい情報を継続的に把握し、自社の対応を見直していくことが求められています。
カスハラ対策で重要なのは、単に「カスハラは禁止です」と伝えることではなく、正当なクレームには適切に向き合いながら、従業員を不当な言動から守ること。
そのためには、方針・判断基準・対応フローを整備し、さらにケースを使った研修などを通じて、現場で実際に判断できる状態を普段からつくり備えておくことが重要です。
出典:東京都「カスタマーハラスメントに関する実態調査」
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