違いをチカラに 人が動けば組織が変わる

悪質なカスハラは氏名公表も。松本市が防止条例を制定――正当な苦情との境界線は?

悪質なカスハラは氏名公表も。松本市が防止条例を制定――正当な苦情との境界線は?

2026年3月16日、長野県松本市議会で、職員に対するカスタマーハラスメント(カスハラ)を防止する条例案が可決されました。

長野県内の自治体では初めての取り組みで、悪質な行為に対しては、行為者の氏名や行為内容を公表できることが注目されています。

市職員の約55%がカスハラを経験

松本市が2024年11月に実施した調査では、職員の約55%が市民や来庁者からカスハラ行為を受けたと回答しています。
今回の条例では、「謝罪の強要」「高圧的・威圧的言動」「正当な理由のない要求」など、11の行為を禁止行為として定めています。

違反行為が確認された場合、市長が行為をやめるよう勧告や命令を行い、命令に従わないなど悪質な場合には、氏名と行為内容を市のホームページで公表できる仕組みです。

条例は2026年4月1日に施行されました。

市民からは賛否の声も

報道では、条例に対して市民からさまざまな意見が寄せられています。

暴言などを防ぐために必要だと評価する声がある一方、氏名公表による個人情報への懸念や、職員側の対応にも問題がある場合があるのではないかという意見も紹介されています。

ここで考えたいのが、「正当な苦情」と「カスタマーハラスメント」の境界線です。

行政や企業の対応に問題があれば、利用者が改善を求めることは当然認められるべきです。

一方、たとえ苦情の内容が正当であっても、暴言や威圧、長時間の拘束など、その伝え方や要求の手段によってはカスタマーハラスメントに該当する可能性があります。

つまり、苦情の内容が正しいかどうかと、その要求方法が適切かどうかは、分けて考える必要があります。

カスハラ対策で重要なのは、現場任せにしない仕組み

今回の条例から、企業も考えておきたいことがあります。

それは、対応の限界を現場の担当者だけに判断させないことです。

例えば、次のような仕組みが考えられます。

  • 判断基準の明確化: 正当な苦情と不当な要求を区別するための基準を整備する
  • 組織的な対応: 対応が長時間に及ぶ場合や威圧的な言動があった場合の上司への報告・引き継ぎ手順を定める
  • 記録の徹底: 要求内容、発言、対応経過などを客観的に記録する
  • 従業員の保護: 被害を受けた従業員への相談対応や心身のケアを行う

カスハラ対策は、顧客や利用者の意見を排除するためのものではありません。

正当な意見には適切に対応しながら、不当な要求や著しい迷惑行為から従業員を守る。
その両立を可能にするのが、組織としての対応基準と仕組みです。

松本市の取り組みは、カスタマーハラスメントを個人の対応力だけに委ねず、組織として向き合う重要性を考える一つの事例といえるでしょう。


出典・参考資料

長野放送(FNNプライムオンライン)2026年3月17日配信
「悪質な場合は『氏名公表』も…松本市で“カスハラ防止条例”が可決 長野県内の自治体では初 職員の約55%が被害経験」
https://www.fnn.jp/articles/-/1016419

※本記事は上記報道をもとに、企業におけるカスタマーハラスメント対策について独自の考察を加えたものです。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

コメント Comments

コメント一覧

コメントはありません。

コメントする

CAPTCHA


トラックバックURL

https://h-clear.jp/%e6%82%aa%e8%b3%aa%e3%81%aa%e3%82%ab%e3%82%b9%e3%83%8f%e3%83%a9%e3%81%af%e6%b0%8f%e5%90%8d%e5%85%ac%e8%a1%a8%e3%82%82%e3%80%82%e6%9d%be%e6%9c%ac%e5%b8%82%e3%81%8c%e9%98%b2%e6%ad%a2%e6%9d%a1%e4%be%8b/trackback/

関連記事 Relation Entry